シリーズ第19弾となる読者会は、「デリバティブ取引管理・外貨建取引管理 編」です。
講師は前回に引き続き、長岡先生にご登壇頂きました。
そして今回は特別ゲストとして、金融機関のご出身で、デリバティブ取引の実務経験が豊富なTさんにもご参加頂きました。
現在も実務に携わっていらっしゃる方なので、最前線の話を聞くことができ、貴重な時間となったのではないでしょうか。
前半は外貨建取引管理についてです。
全てを網羅しようとすると非常に奥の深い分野なので、今回は一般的に「為替予約」「先物予約」と言われている部分に絞って学習を進めていきました。
冒頭には、長岡先生から「先物相場」や「為替予約」などの基本的な用語についてご説明をして頂き、さっそくディスカッションに移りました。
今回の課題は、ある架空の会社が米国企業と輸出取引をするにあたって、「為替予約契約を締結するべきか否か」というものです。
為替予約を締結する場合の適用レートや為替相場の予想(ドル高/円安)などを参考資料として、4人1組のグループで話し合っていただきました。
なかなか難しい課題でしたが、皆さま非常に熱心に話し合われていて、グループごとの発表の際には、「なぜそのような判断をしたか」という判断理由までご説明されていました。
どちらかというと、リスクヘッジを優先するというご意見が多かったですね。
皆さまからの発表の後には、ゲスト講師のTさんに実務上のポイントをお話して頂きました。
例えば、為替予約をしなかった場合、円貨建てで売上を立てると売掛金になるため、数ヵ月後の決済日のレートと差額が出た場合は営業外の損金となります。
その損金をなるべく出さないために、Tさんの会社では毎月「リスク管理委員会」を開催しているそうです。
その中で社内レートを設定したり、外貨建取引のうち、どのくらいの割合を為替予約するのかということなどを話し合っているとのこと。
グローバルな視点でも相場は日々めまぐるしく変わっていくので、実務の中では、「予約をすべきか/すべきでないか」という二択では、なかなか選べない問題です。
会社としては健全性を保つために、外部環境の変動に対する対策が必要になってくるのですね。
デリバティブについては、「先物取引」「スワップ取引」などのさまざまな種類がある中で、オプション取引を中心に取り上げました。
実務では買う権利を「コールオプション」、売る権利を「プットオプション」とよんでいますが、買い手と売り手、買う権利と売る権利の関係性や、損益の発生する仕組みについて、図を使いながらご解説頂きました。
その後は再び、グループディスカッションです。
二つ目の課題は、前半も登場した架空の会社が、オプション契約を銀行との間で締結するというケースです。
「為替予約」と「オプション契約」との違いをグループのメンバーの中で検討していきました。
皆さまからの発表の中では、為替予約に比べて、オプション契約は「権利を行使するか放棄するか」を選択することができるので、リスクヘッジを期待できるというご意見などが挙げられていました。
また、デリバティブについて、実務の世界ではどのように捉えられているかということですが、参考資料として新聞記事の一部と、ある企業の有価証券報告書の中から金融商品関係の項目を抜粋したものをご紹介頂きました。
デリバティブ取引を行っている会社は、有価証券報告書の中で、金融商品について会社が行おうとしている方針や規定、リスク管理について開示するということが決められているそうです。
だだ、このようにデリバティブ取引を、会社全体の為替リスクのコントロールために利用しようという事業会社は、まだ数限られているのが現状です。
社内体制を整えるなどの準備は必要ではありますが、リスクを認識してコントロールするために、是非知識を深めて、実務にお役立て頂けたらと思います。
セミナー終了後のアンケートでは、このようなお声を頂きました。
今回のセミナーは特に、休憩時間や授業後も、お二人の講師へとご質問するためにたくさんの方が集まっていました。
講師のお二人も皆さまの熱に驚かれつつも、お一人おひとりにご丁寧にお答えされていました。どなたも充実した2時間をお過ごし頂けたのではないでしょうか。
さて、次回は財務分野の締めくくり、「資金管理 編」です。また次の読者会でお会いしましょう!
【開催日】2015/10/21
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