簿記検定には「日商簿記」「全経簿記」「全商簿記」の3つがあります。どの試験を受ければいいの?とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日商簿記
」と税理士試験の税法科目の受験資格を得ることができる「
全経簿記
」の2つについて、その違いと特徴を教えていただきましたので、ぜひ参考にしてください。
目次
「日商簿記」「全経簿記」の違い
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主催者が違う
どちらも簿記の試験ではありますが、主催団体が違います。「日商簿記」→日本商工会議所このため両者には試験問題の出題傾向や受験料などにも違いが見られます。
「全経簿記」→全国経理教育協会
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級数の表記と合格率が違う
「日商簿記」と「全経簿記」の試験では、受ける級数の表記も違うため注意が必要です。
難 ⇔
易 日商簿記 1級 2級 3級 全経簿記 上級 1級 2級
直近8回の平均から、日商簿記1級の合格率が約11.7%に対し、同等レベルの全経簿記上級の合格率は約14.2%と、やや高くなっています。
どちらの試験も合格すれば税理士試験の税法科目の受験資格を得られますが、あえて合格率の高い「全経簿記上級」を受験する税理士志望者もいるようです。 -
試験問題の出題傾向が違う
わたしは「日商簿記1級」「全経簿記上級」の両方の試験に合格しています。実際に試験を受けた所感では「全経簿記上級」の方が合格しやすい印象でした。
理由として、各科目で1題のみの出題はほとんどなく、論点を分けて2題から3題に分割して出題している傾向があるからです。もし知らない論点やわからない部分があっても、大幅な減点を回避できるよう問題の制作者側で工夫されているように思います。
また、最近の日商簿記1級は公認会計士試験にも似た少し難しい問題が出題されていると感じます。日商簿記が試験範囲の改定を行い、より実務を意識した試験に変わった結果、全体的に難易度が高まったと感じる受験者も多いようです。
試験範囲はどちらも同じですが、そういった出題傾向の違いも理解しておきましょう。 -
受験者層が違う
日商簿記の受験者数は毎年50~60万人前後。圧倒的な受験者数、および知名度を誇ります。
「日商簿記2級」以上は転職の際に評価されやすく、企業の採用担当者にも広く認知されていることから、主な受験者層は社会人です。
一方、「全経簿記」は経理専門学校の生徒が受ける傾向があり、全体の受験者数も日商簿記と比べると大変少ないです。 -
試験回数と開催時期
日商簿記は年3回、全経簿記は年4回開催されます。ただし、毎回すべての級が開催されるわけではなく、開催時期により異なるため注意が必要です。
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開催時期 | |||
日商
簿記
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6月 | 11月 |
2月
(※1級開催無)
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- |
全経
簿記
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5月
(※上級開催無)
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7月 |
11月
(※上級開催無)
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2月 |
※日商簿記2、3級はネット試験あり
どちらも1年通じて試験が行われているため、受験しようと思い立ってから継続してモチベーションを保つことができ、目標を持って取り組めるのも良いところです。
「日商簿記」「全経簿記」、それぞれのメリットは?
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就職・転職にオススメなのは?
「日商簿記」、「全経簿記」どちらも取得すれば、就職・転職の際に履歴書に書くことができ、評価されます。目安として、日商簿記は2級以上、全経簿記なら上級でしょうか。
ただし、求人票の必要となる資格の要件には、「日商簿記2級」と記載されていることが多いです。転職や就職の際には、まず日商簿記2級の取得を目指しましょう。 -
税理士試験の税法科目の受験資格を得るには?
また「日商簿記1級」「全経簿記上級」のどちらも、取得すれば税理士試験の税法科目の受験資格が得られるというメリットがあります。
合格率や出題傾向を考えると、税理士を目指している方は「全経簿記上級」の取得を検討してもよいのではないでしょうか。 -
「日商簿記」「全経簿記」の両方を受けるメリットは?
ここまでお話をしてきて、全経の方がやさしいという印象を持たれた方もいらっしゃるかもしれませんが、どちらもそれぞれの難しさがあります。合格のチャンスを増やすために、「日商簿記1級」「全経簿記上級」の両方を受験することをオススメします。
両方の試験を受けることで、6月(日商)7月(全経)11月(日商)2月(全経)と定期的に程よい間隔で受験でき、学習のモチベーション維持にも効果的です。
例えば、11月の日商簿記1級の試験を受けてダメだった場合、つぎの試験は翌年の6月なので、少し間延びをしてしまうこともあります。そこで2月の全経上級も受験することで、気持ちを途切れさせずに勉強を続けることができるでしょう。
ぜひ、年4回のチャンスを有効に活用してください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
就職や転職時の知名度の高さから日商簿記を受験する方が多いですが、全経簿記にもメリットはあります。
目的に合った資格試験を選び、ぜひキャリアアップに役立ててください。