日商簿記検定のネット試験は、解答を試験会場のパソコンで行うという試験方式です。
統一試験と違い試験日時の自由度が高く、また合格が即日発表されるなど、大変便利なシステムなため、東京都など一部ではすでに統一試験を廃止し、ネット試験のみでの受験となっています。
今後、この傾向は加速すると思われますので、試験を受ける方はその違いや対策の仕方などについて、ぜひ知っておきましょう。
目次
日商簿記のネット試験とは
日商簿記のネット試験は、
現在、ネット試験が行われているのは
今までの簿記試験は解答用紙に記入する『統一試験』と呼ばれるものでしたが、2020年12月よりコロナ禍に対応するために、一斉試験の代替として『ネット試験』が新たに導入されました。
パソコンで解答するといっても、自宅のパソコンで自由に受験できるわけではなく、指定された試験センターで受験をすることになります。
ネット試験と統一試験の違い
ネット試験と統一試験の大きな違いは、
ネット試験での計算用紙は2枚配布されますが、問題はパソコン上に表示され、解答はパソコンに入力する形式となっています。また、ネット試験の試験会場は日本全国のテストセンターで行われるのに対し、統一試験は指定された大学や商工会議所などの会場で行われます。
さらに試験日についても違いがあります。ネット試験は統一試験の前後と4月に一定の受験停止期間が設けられており、その日をのぞくとほとんど毎日受験が可能です。一方の、
合否判定でも違いがあり、ネット試験では試験終了後即時に合否が判明する一方で、統一試験は発表までに2週間程度かかります。
ネット試験を受けるメリット
ネット試験は実施形態による大きなメリットがあります。日商簿記2級では、公表されているデータによると、ネット試験を受験された方の合格率が高いという傾向もあるため、このメリットは大きいとみて間違いないでしょう。
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資格取得のタイミングを自分の都合で選べる
今までの統一試験は日程が決まっていたため、そこに向けて勉強していました。ネット試験では逆に「就職試験までに」「入試前に」など、自分の目標に合わせて試験日を設定することができます。
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試験終了と同時に合否がわかる
試験終了後、試験システムにより自動採点され、合否が判定されます。判定結果を記載したスコアレポートが紙で配布され、合格者のみスコアレポート内の二次元コードからデジタル合格証を取得することができます。 -
不合格の場合でも、苦手を克服したらすぐに再チャレンジできる
試験終了後、試験システムにより自動採点され、合否が判定されます。判定結果を記載したスコアレポートが紙で配布され、合格者のみスコアレポート内の二次元コードからデジタル合格証を取得することができます。
万一、不合格になってしまった場合の再チャレンジも、受験した日の翌日から申し込み可能なため、自分のタイミングで行うことができます。 -
統一試験より簡単な傾向がある
統一試験に比べるとネット試験の方が、問題文が短く簡単な傾向があるようです。これは試験問題がパソコン上に表示されており、書き込むことができないため、長文を出題していないという配慮があると想像されます。日商簿記2級の場合、実際のところネット試験を受験された方の合格率が高いという傾向もあります。
ネット試験のデメリット
もちろん、よいことばかりではありません。ネット試験のデメリットは以下のようになります。
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勉強のモチベーションを保ちにくい
試験日が決まっていないということはメリットでもありますが、いつでも受けられると安心してしまうということでもあります。
勉強に対するモチベーションを保ちにくいため、「自分で細かく目標を立てる」、「先に試験日を決める」など上手くスケジューリングするようにしましょう。 -
パソコン画面を見ながらの解答になるため、計算などがしづらい
試験会場からはA4サイズの紙2枚、筆記具(ボールペン)が配布されます。
試験はパソコン画面の問題を見ながらの解答となるため、慣れない場合は集中力が途切れたり、計算がしづらいと感じるかもしれません。 -
試験会場によってはパソコンが古い
試験会場にもよりますが、パソコンは必ずしも最新のものではなく、また使い慣れていないため自宅のパソコンと比べ扱いづらいと感じる可能性があります。
ネット試験のための対策
ネット試験と統一試験の出題範囲に違いはありません。
基本的な勉強をきちんとすることは当然ですが、加えてパソコンの操作に慣れておく必要もあります。
また、ネット試験に限らず以下に有効な試験対策をご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。
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予想問題集を解く
予備校などから、傾向と対策を網羅した『予想問題集』が発売されています。大きめの本屋に行けば簿記のコーナーがあるので、入手できるでしょう。1冊で大丈夫ですので、必ず全て解いて合格点を出せるようにしておきましょう。 -
苦手箇所の克服
どうしても苦手な箇所がある場合、下記のような動画で改めてピンポイントで学習し、克服しておきましょう。
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問題文の読み方を理解する
会計専門学校の講師をしていると、何度か2級の試験に挑戦しても合格できない方がいらっしゃいます。そのような方は、問題文の意味を正しく理解できていないことが多いです。
以下に例題を提示いたしますので、どのように問題文を整理すればよいか、参考にしてください。
例)
現金の帳簿残高が実際有高より¥20,000少なかったので現金過不足として処理していたが、決算日において受取手数料¥25,000と旅費交通費¥6,000の記入漏れが判明した。残額は原因不明であったので、雑益または雑損として処理する。
上記のような問題ですが、問題文が長く3つの段階を踏み解答する必要があります。このような場合、
あくまでも参考ですが、以下のように整理できると思います。
① 現金の帳簿残高が実際有高より¥20,000少なかったので現金過不足として処理していた が、② 決算日において受取手数料¥25,000と旅費交通費¥6,000の記入漏れが判明 した。③ 残額は原因不明であったので、雑益または雑損として処理 する。
① 現金の帳簿残高が実際有高より¥20,000少なかったので現金過不足で仕訳済み。
(借)
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現金 | 20,000 | (貸) | 現金過不足 | 20,000 |
② 受取手数料¥25,000と旅費交通費¥6,000の計上漏れが判明したので、現金過不足勘定で訂正する。
(借)
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旅費交通費
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6,000 | (貸) | 受取手数料 | 25,000 |
(〃)
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現金過不足
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19,000
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③ 決算時点で現金過不足勘定残高¥1,000が不明のため、雑益または雑損で処理する。
(借)
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現金過不足
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1,000
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(貸) |
雑益
|
1,000 |
問題を読み、解答するまでこのような整理が必要になります。そのうえで、①は仕訳済みなので、②と③を合わせたものが解答として求められることになります。
(借)
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旅費交通費
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6,000
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(貸) |
受取手数料
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25,000
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(〃)
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現金過不足
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20,000
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(〃)
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雑益
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1,000
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最後に
今回の記事で、ネット試験と統一試験の違いがおわかりいただけたことでしょう。ネット試験、統一試験、それぞれのメリットとデメリットを踏まえて、受検していただければと思います。
また、何度受けても受からない方は、最後に挙げた項目のように、問題文の読み方に難のあるケースが多いです。この記事がみなさんの合格のきっかけになれば幸いです。