合格すれば、「極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を習得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル」(日本商工会議所WEBサイトより)であると認められる日商簿記1級。難関資格ではありますが、取得することでどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、長く簿記講座の講師を務める鯖江悠平先生にお話をお伺いしましたので、ぜひ参考にしてください。
目次
日商簿記1級は、本当に転職に有利?
-
日商簿記1級が有利に働く転職先は?
難関資格であるため、知識や向上心なども含めて転職市場でも高く評価される日商簿記1級ですが、転職先によってはそこまで優位性はないため、注意が必要です。
やはり評価が高いのは大手企業の経理部、経営企画部などの管理部門です。
日商簿記1級では、簿記に加えて工業簿記や原価計算の知識も勉強します。これは経理部門のみならず、予算作成や、経営分析などを行う経営企画系の部門、製造費用の管理、製品原価の決定などを行う部門、その他にも財務やマーケティング、経営管理などの幅広い部門との親和性は高いと言えます。
すでに日商簿記2級をお持ちで、中小企業の経理部から大手企業の経理部にキャリアアップを目指している方には、最適の資格と言えるでしょう。 -
日商簿記1級は、税理士・会計事務所への転職には有利?
一方で税理士・会計事務所への転職の場合、日商簿記は2級を持っていれば十分でしょう。簿記論やその他の税理士試験の科目合格の方が評価される傾向があります。
実務未経験でも日商簿記1級を持っていれば転職できる?
-
実務未経験20代の場合は?
実務未経験でこれから資格を取得する場合でも、20代であれば日商簿記1級を取得することで、有利に転職活動を進めることができるでしょう。
-
実務未経験30代の場合は?
30代以降であれば、やはり今までの実務経験を問われる場合がほとんどでしょう。違う業種から経理業界への転職を考えている場合は、まず経験を積むことを最優先して一日も早く転職することをおすすめします。
そのうえで資格試験に挑戦し、キャリアアップを図るのがよいのではないでしょうか。
日商簿記1級以外に持っているとよい資格
-
税理士
税理士試験の受験資格の詳細はここでは省きますが、2023年の試験から受験資格要件が緩和されています。
受験資格これまでは日商簿記1級を取得することで、税理士試験の受験資格を得ることができたのが、上記の通り不要となりました。
簿記・財務諸表論 ➡ 不要(簿記1級不要)
税法 ➡ これまでと同様
10年前ですと、3~5科目は合格していないと大手会計事務所や税理士法人への転職は難しかったのが実情です。人手不足の現在は、求人票において税理士試験に1~2科目の合格に条件緩和されるなど、敷居が下がっていると言えます。
会計事務所では日商簿記1級資格に加え、1科目でも税理士科目の合格を持っていることで給与にも差がつきます。
税理士を目指す方は、ほとんどが働きながら勉強しています。仕事と受験勉強の両立をすることが一つの課題のようですが、次のステップとして挑戦してもよいのではないでしょうか。 -
公認会計士
日商簿記1級以上に難関資格のため、挑戦をするには慎重な検討が必要です。一方で、財務会計論の試験では内容が重なる部分も多くあります。会計・監査に興味が出てきた場合は、覚悟を持って挑戦してください。
「簿記1級で実務未経験」 or 「簿記2級で実務経験あり」、評価が高いのは?
せっかく取得した日商簿記1級の資格を活かした転職をするためには、
資格のみに頼るのではなく、当たり前ですが総合的にみて企業側が欲しいと思える人材になることが重要
です。
大変難関の資格ではありますが、
しっかりした実務経験に勝るほどのアピール力はありません
。
実務経験プラス日商簿記1級を持っていると転職市場では高く評価されます。実務経験のない日商簿記1級保有者と、
実務経験のある日商簿記2級保有者であれば、実務経験のある方が有利
です。
ともあれ資格を取得することで、転職活動に自信を持って大きくチャレンジすることができるのは間違いありません。ぜひ頑張っていただきたいと思います。