あなたは「簿記1級 やめとけ」という検索ワードでこの記事にたどりつきましたか?
もしかしたらすでに学習中で、あまりの過酷さにやめる理由を探しているのかもしれません。
しかし日商簿記1級取得には、隠されたメリットが多くあるのです。
ここでは実際に日商簿記1級をお持ちで、かつ長年、会計専門学校で簿記講師を務めていらっしゃる鯖江悠平先生にお話をお伺いしました。
学習のモチベーションを保つためにも、ぜひ参考になさってください。
目次
日商簿記1級はやめとけ、といわれている理由
確かに日商簿記1級は「やめとけ」といわれている理由がいくつかあるかもしれません。
以下に具体的な理由をあげますが、しかしそれは実際に検定合格をあきらめる理由にはならないということも先に述べておきます。
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合格率が低い
日商簿記1級は年2回開催されますが、合格率は毎回10%前後。さらに合格者数も1000人程度の大変狭き門です。これだけを聞くと「受験者の9割近くが不合格…自分は本当に合格するのだろうか」と不安になる気持ちもわかります。しかし、受験者の中で日商簿記1級の全範囲を学習できている人は、果たして何割くらいいるのでしょうか?
わたしが在籍している学校でも、4月に入学した生徒が基礎を一通り学習し、6月に日商簿記1級を受験するケースもあります。実際の試験の雰囲気などを経験して、次の11月に備えるという感じです。このように
「もしかしたら受かるかも?」という記念受験者が一定数含まれていると思われます。そういった受験者が全体の何割いるのかまではわかりませんが、全範囲を網羅的に学習し、試験に臨む人の合格率はもっと高いと思います。
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ゼロからスタートの場合、学習時間は1000時間以上が必要
最初から日商簿記1級を目指す人は少ないかもしれません。しかし日商簿記2級に合格し、さらに600~800時間は学習時間が必要です。1000時間以上もの学習時間を費やすのであれば、国家資格である税理士の簿記論、財務諸表論などに挑戦してみようと思っても不思議ではありません。そういう意味では
コスパが悪いと感じる人もいるでしょう。 -
日商簿記1級が必須の求人は少ない
経理職での募集の場合、やはり日商簿記2級以上が応募条件となっているケースが最も多いようです。企業側としても、より高度な人材が欲しい場合でも、そもそも取得者が少ない日商簿記1級を条件としてしまうと、応募人数が減ってしまうというリスクがあるからだと推測します。
就職や転職に有利だと言われる
日商簿記2級を取得した時点で、その先を目指すのをやめてしまう人が多い理由の一つではないでしょうか。 -
万遍なく学習しても、必ず合格できる試験ではない
毎年の試験問題を精査している立場からすると、日商簿記1級の試験は講師でも驚く意外な論点が出題されることも多々あります。さらに問題の難易度にムラがあるため、
試験中の時間配分はとても重要になってきます。例えば、序盤に難題があったとします。その問題に時間を割いてしまい、その後の解けそうな問題に時間をかけることができなかったという話はよく耳にします。逆に、その難問を飛ばすことができた方が合格するケースも多々あります。そのため、見極めも非常に重要になるということです。
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学習量が増えている
会計基準の改正などが行われるため、それに伴い学習する項目も増えているように感じます。最近(数年経ちますが)の改正では「収益認識に関する会計基準」が施行されたことにより、収益に関連する会計処理が変更されました。仕事をする以上、常に学習することは避けられないのですが、試験範囲はできれば少ない方がいいと思うのは当然ではないでしょうか。
日商簿記1級を取得するメリット
上記に書かれた理由をみて、大変そうだなと思いましたよね。
当然ですが、それを上回るメリットがなければ頑張る気持ちにならないと思います。
日商簿記1級取得のメリットは、以下になります。
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大きな自信になる
まず第一に、大きな自信になるということ。具体的なメリットでない、と思いましたか?
しかし、
わたしが日商簿記1級を取得して一番良かったと思うのはここです。大変難しい検定を合格するまで頑張って、結果がついてきたという成功体験は、その後の人生に大きな自信をもたらします。わたしは18歳のときに合格したのですが、諦めず
やりきったという気持ちは、いまに至る生涯、自分へのプラスになっていると思います。諦めるのは簡単ですが、困難だからこそやりきることは大変なのです。
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社会的にも評価が高いため、就職・転職活動で有利
合格者の少ない日商簿記1級は、企業の経理部内でも取得している人材は少ないです。そのため就職・転職の際には、非常に高い評価を得られるでしょう。
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さらに上の資格を目指すきっかけになる
日商簿記1級は税理士試験、公認会計士試験の登竜門とも言われています。出題範囲は
税理士試験の必須科目である簿記論、財務諸表論と共通する部分が多いです。設問の切り口や解答量が違うのでそれに慣れることができれば、日商簿記1級合格レベルの知識がある方は、この2科目に対応することができます。さらに高卒の方や大学1,2年生の方でも、日商簿記1級を取得することで、税理士試験税法科目の受験資格を得ることもできます。
日商簿記1級を取得した場合のキャリア
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大企業ほど評価される
人気の高い大企業への転職の場合でも、日商簿記検定1級を持っていると数多い応募者の中で目立つと考えられます。そのため、就職・転職の際にも、そういった大企業であるほど評価される検定だと言えるでしょう。さらに原価計算に出題される意思決定の知識などは経営の部分で役に立つことが多いため、
経営に関する業務にキャリアップする際に役立つと思います。もちろん現在の会社で資格手当など、直接的な評価がある場合もあるでしょう。 -
税理士を目指す場合は?
また税理士を目指している方には、こんなキャリアプランもあります。日商簿記1級に6月に合格し、同じ年の8月に税理士試験の簿記論、財務諸表論に合格するというプランです。わたしが在籍している学校にもこういった方が実際にいます。これは上にも書きましたが日商簿記1級の知識が、税理士試験にも十分対応できるという証明です。
おわりに
「簿記1級、やめとけ」と言われることも多いですが、取得することにより合格という結果だけではなく、あきらめず合格までたどり着いた自信などの成功体験などを得ることができます。
検定合格と総合的にみて企業側が欲しいと思える人材になることにより、より一層のキャリアアップがはかれるのではないでしょうか。