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日商簿記3級、2級の違いを解説! 資格取得後に勉強すべきは?

鯖江 悠平

就職や転職に有利だと言われている簿記の資格。
いざ勉強を始めようと思った時には、日商簿記3級、2級の違いについても気になるのではないでしょうか。

「試験内容は?」「難易度や勉強時間は?」等々。

ここでは長年、会計専門学校で簿記講師を務める鯖江悠平さんにこの2つの資格を比較していただきました。

これから簿記の勉強に挑戦しようと思っている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

    日商簿記3級と2級の違い

    日商簿記は3級、2級、1級と難易度があがっていきます。当然、試験内容や範囲なども変わってきますので、まずはその違いをきちんと理解しましょう。

    (1)試験概要と内容

    ① 日商簿記3級:基本的な商業簿記

    業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。 基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。

    WEBサイト『簿記 商工会議所の検定試験』より

    具体的には、商品売買、給料の支払い、その他経費の支払いなど、

    日常の業務で生じる取引、主要な決算整理仕訳
    などが出題されます。

    ② 日商簿記2級:高度な商業簿記と工業簿記

    経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。 高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル

    WEBサイト『簿記 商工会議所の検定試験』より

    具体的には

    • 商業簿記では 級で学習済みの
      商品売買や固定資産などを、さらに幅広く深く出題される
      のでそれに対応できるよう学習する必要があります。ほかには、
      リース会計、外貨建取引、税効果会計、連結会計
      など。
    • 工業簿記では、製造業における個別受注生産に用いられる
      個別原価計算
      。規格品製造にかかる総合原価計算、実際の製造活動が目標どおりに行われているかなどをチェックする
      標準原価計算
      、短期利益計画に用いられる
      直接原価計算
      などが出題されます。

    (2)難易度と受験者数

    WEBでよく見る記事には、3級と2級の合格率を比較しているものが多いようです。そもそも問題が違うので、

    合格率を比較することにあまり意味はない
    と思います。3級より2級は難易度があがるため、合格率は必然的に下がるということくらいを押さえておけばよいでしょう。

    しかし、最近の統一試験の受験者数の推移をみてみると減少しているようには見えます。一方のネット試験の受験者数は増えており、トータルでの受験者は増加しています 。

    やはり、

    日商簿記3、2級の社会的な需要が増している
    ことが読み取れるように思います。

    統一試験 受験者数推移

    3級 2級
    167回(2024年6月) 24,497名 7,786名 申込者数で記載
    166回(2024年2月) 28,565名 10,814名
    165回(2023年11月) 30,387名 11,572名
    164回(2023年6月) 31,818名 10,618名
    163回(2023年2月) 37,493名 15,103名

    統一試験、ネット試験 受験者数推移

    3級 2級
    2023年4月~2024年3月 238,155名 119,036名
    2022年4月~2023年3月 207,423名 105,289名

    (3)勉強時間

    一般的な勉強時間のだいたいの目安についてお話いたします。
    日商簿記3級の勉強時間は80時間~100時間程でしょうか。

    1日3時間の勉強を毎日行い、1か月程度
    はかかるイメージです。

    日商簿記2級の勉強時間は、日商簿記3級を取得している場合でしたら最低300~350時間程度でしょうか。1日3時間の勉強を週5日行い、5か月程度はかかるイメージです。

    (4)それぞれの資格、実務での価値

    日商簿記3級:

    これから経理の仕事をしたいと考えている人向けです。基礎的な簿記知識を習得し、貸借対照表や損益計算書の作成方法、帳簿の記載方法が身につきます。

    日商簿記2級:

    上場企業や上場企業の子会社などの経理部で働くための最低限の知識が身につきます。工業簿記も理解できるようになるため、製造業などの経理にも転職が可能。

    求人票などでよく見かけると思いますが、必須条件や歓迎条件として記載されることが多く、転職市場でも評価されます。

    日商簿記をどのように受ければいい?

    日商簿記3級、2級の違いを理解できたところで、「では、どのように受けたら最短で資格が取れるのだろう」と思いましたか? どちらを受けるか迷っている場合には、

    あなたにとってどちらの資格が必要かで判断するのがいい
    と思います。

    もしあなたが経理部に所属しており、社内の昇進試験などでできるだけ早く簿記2級が必要な場合もあるでしょう。その際は3級を飛ばして、いきなり2級に挑戦することも可能ではあります。

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    しかし、

    これから経理に転職したいと考えていて、簿記を勉強するのも始めての場合、まずは日商簿記3級の勉強をして基本を理解しましょう

    日商簿記の資格を取得した、そのあと

    (1)税務の知識は必要

    簿記講師として思うのは、無事に日商簿記の資格を取得したあと、その知識を最大限に活かすためには、

    税務に関する知識を付けることも必要
    だと思っています。経営と税金は切り離すことができない知識です。

    会社の業務で活かしたい場合は

    「法人税」「消費税」
    の知識があると、必要な人材として評価されると思います。

    もちろん税理士試験レベルの勉強をする必要はありません。社会人向けの税務講座などで、簡単な知識を学んでおくだけでも大きな違いがあります。

    (2)建設業界の経理で働きたい場合は、建設業経理士も

    さらに業種の幅を広げるために、日商簿記検定2級と類似した知識で受験が可能な「建設業経理士」という資格も注目されているように思います。

    建設業経理士は建設業に特化した経理スキルを習得できる資格
    です。企業側にとっては経営事項審査の加点対象となるため、有資格者は高く評価されているようです。

    今回はあくまでも一例ですが、日商簿記の資格を取得した先には、さらにスキルアップできる道がつながっています。まずは最初の一歩を踏み出し、無事合格することを祈っています。

    講師プロフィール

    鯖江 悠平

    簿記専門学校卒業後、専門学校の簿記会計講師を担当。

    これまで簿記会計の授業だけではなく、テキストや問題集等の教材開発、学生の就職相談や卒業生の転職相談など幅広く業務に携わっている。