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【簿記講師が語る】日商簿記3級は経理の転職に役に立つのか?さらなるステップアップに必要なこと4選

鯖江 悠平

経理の仕事に資格は必須ではありません。しかし未経験から経理に転職したいと考えた時に、まず取得しようと考えるのが『日商簿記3級』ではないでしょうか。


ここでは長年、会計専門学校で簿記講師を務める鯖江悠平先生に、簿記3級を取得するメリットについてお話をお伺いしましたので、ぜひ参考にしてください。

目次

    日商簿記3級の資格とは

    日本商工会議所では日商簿記3級のレベルについて以下のように定義しています。


    業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。
    基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。
    (『 商工会議所の検定試験 』より)


    実際の求人では日商簿記2級以上を求められることが多いため、次にステップアップするための基本知識として、企業の経理部門や会計事務所に就職、転職したい人は取得しておいて損はないと思います。

    日商簿記3級で可能な仕事

    1. 日商簿記3級のみが求められる求人は、そもそも少ない

      日商簿記3級を取得することで小規模企業の経理部の基本的な業務、また会計事務所での税理士の補助業務などが可能です。

      ただし、日商簿記3級は小売業などを対象とした商業簿記の基本的な知識を問われる試験です。こういった
      小規模企業は経理関係の業務を会計事務所にアウトソーシングしている
      場合が多く、自社で経理を採用していなかったりするため、求人数はそれほど多くないように感じます。

      また、税理士の補助業務は税理士と同等の専門的な知識が必要ではありませんが、簿記の深い知識があることで、業務を円滑に遂行できるのではないかと思います。
    2. 多くの経理求人で求められるのは日商簿記2級以上

      日商簿記3級を持っていることで、資格ナシより社会的な評価を受けることは間違いありません。

      ただ、多くの経理の求人で求められているのは、日商簿記3級より発展的な内容や、製造原価の計算などを学習する
      『日商簿記2級』以上の資格が多い
      です。
    3. 日商簿記2級へのステップアップに3級の知識は必須

      とはいえ、日商簿記3級の試験では基本的な簿記の知識が習得できます。

      日商簿記3級で基本的な部分を学習し、日商簿記2級ではさらに発展した内容や、基本的な知識を前提とした新たな論点を学習するイメージです。そのため、
      日商簿記2級へステップアップするためには必要な知識
      となります。

      特に経理未経験の場合は、当然持っているべき基本的な知識として日商簿記3級を取得し、引き続き日商簿記2級を目指すことで、今後、AIなどに代替されない簿記会計のスキルを身につけることができるでしょう。

    日商簿記3級を目指し、その後のステップアップのために必要なこと

    日商簿記3級に限らず、簿記に関する試験を暗記で乗り切るには限界があります。


    本質的な理解ができておらず、早い段階でつまずいてしまい、簿記2級以降の資格取得を諦める原因になっている受験生をよく見かけます。


    「簿記検定に合格すること」は手段であり、「簿記会計の知識を用いて財務諸表を作成し、活用することができるようになること」が目的です。


    目先の転職や就職のために小手先のスキルで乗り切ろうとせず、
    基本に忠実に、根本的な部分を理解することが何より大切です


    基本的なことですが、学習をするうえで大切なことをお伝えします。

    1. 読解力

      簿記3級の新試験では、最初に15問の仕訳問題が出されます。これに正答するためには、
      会計処理の一連の流れを理解し、さらにどこの処理について聞かれているのか正確に判断する読解力
      が必要になります。

      問題文から「お金を借りた時の仕訳なのか」「利息の支払いの仕訳なのか」など…必要な情報を自分で読み取る必要があります。

      読解力は一朝一夕で身につくものではないですが、まずは問題文を丁寧に読み、何の処理について聞かれているのか判断する練習をしましょう。
    2. 文章力

      日商簿記2級までは論述問題は出題されないため、これは最終的に日商簿記1級・税理士・公認会計士の資格を目指したい人に必要なものです。

      文章力を伸ばすポイントとしては、
      多種多様な会計処理に関する条文に触れておく
      ことが大切です。

      自分の中にひな型のストックを積み上げておき、必要なキーワードを抑えたうえで、それを問題文に沿って論理的に書くことができるようにならなくてはいけません。
    3. 電卓を早く・正確に

      実際の経理の現場ではExcelなどを用いることが多いため、電卓を使用する機会は少ないかもしれません。

      しかし、試験に合格するためには、難易度があがるほど電卓の処理スピードもそれなりに必要になってきます。なるべく
      電卓を見ずに計算できるよう学習の初期段階で早く・正確
      に打てるように練習するといいと思います。

      よく利き手と逆の手で練習しましょう、とアドバイスされるかもしれませんが、個人的には合格にそこまで関係があるとは思えないので、やりやすい方で練習して大丈夫です。
    4. 処理をいろいろな角度から見て理解する

      一つの会計事実について、二つ以上の処理方法が認められていることが多々あります。

      このような場合に、なぜこちらの方法が原則的な処理であるのか、など表面的に覚えるのではなく、
      なぜ?どうして?と疑問を持つことで理解度を上げることができます
      。その結果、簿記の学習が楽しくなり、より自発的な学習につなげることにより、より高度な資格取得の原動力となると思います。

      今後、単純な入力作業などはAIに代替されるようになると思いますが、どんな時代になっても最終的な経理処理の判断は人間が行います。そこを担う人材となるため日商簿記3級をきっかけに、さらに上まで勉強を続けていただければと思います。
    【要チェック】
    経理職を目指す人のための日商簿記3級講座(無料)
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    講師プロフィール

    鯖江 悠平

    簿記専門学校卒業後、専門学校の簿記会計講師を担当。

    これまで簿記会計の授業だけではなく、テキストや問題集等の教材開発、学生の就職相談や卒業生の転職相談など幅広く業務に携わっている。