日商簿記2級 想定問題集
第1回
第1問(20点)
下記の各取引について仕訳しなさい。ただし、勘定科目は、各取引の下の勘定科目から最も適当と思われるものを選び、記号で解答すること。
1. 国から受け取っていた国庫補助金¥100,000に自己資金¥250,000を加えて機械装置¥350,000を購入し、代金は普通預金口座より支払った。なお、この機械装置は補助金に相当する額について直接減額方式による圧縮記帳の適用を受ける処理も同時に行った。
ア.機械装置 |
イ.国庫補助金受贈益 |
ウ.普通預金 |
エ.固定資産圧縮損 |
オ.当座預金 |
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解 答
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仕 訳 |
|||
借 方 科 目 |
金 額 |
貸 方 科 目 |
金 額 |
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59 |
ア |
350,000 |
ウ |
350,000 |
エ |
100,000 |
ア |
100,000 |
解 説
固定資産の取得と圧縮記帳
⑴ 国庫補助金の受入時
国等から補助金を受け取った場合には、「国庫補助金受贈益(収益)」として処理する。
(借) |
現金預金 |
100,000 |
(貸) |
国庫補助金受贈益 |
100,000 |
⑵ 固定資産の取得と圧縮記帳(解答)
固定資産を取得し、補助金相当額を直接減額方式により圧縮記帳の適用を受ける場合には、固定資産の取得原価を直接減額し、「固定資産圧縮損(費用)」で処理する。
(借) |
機械装置 |
350,000 |
(貸) |
普通預金 |
350,000 |
(借) |
固定資産圧縮損 |
100,000 |
(貸) |
機械装置 |
100,000 |
2. X3年7月3日、海外の仕入れ先より、掛代金の決済日をX3年10月31日として商品30,000ドルを購入していたが、本日(X3年8月5日)、取引銀行との間で、買掛金の支払いに備えて30,000ドルを1ドル¥100で購入する為替予約を締結した。輸入時の為替相場による円換算額と、予約した為替相場による換算額との差額はすべて当期の為替差損益として処理する。なお、輸入時の為替相場は1ドル¥97、本日の為替相場は1ドル¥99であった。
ア.買掛金 |
イ.仕入 |
ウ.前払金 |
エ.未払費用 |
オ.為替差損益 |
カ.損益 |
解 答
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仕 訳 |
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借 方 科 目 |
金 額 |
貸 方 科 目 |
金 額 |
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60 |
オ |
90,000 |
ア |
90,000 |
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解 説
買掛金について為替予約を行った場合には、買掛金を為替予約相場(決済時の相場)に修正し、差額を「為替差損益(収益又は費用)」で処理する。
(借) |
為替差損益 |
90,000 |
(貸) |
買掛金 |
90,000 |
※ 30,000ドル×{¥100(為替予約相場)-¥97(輸入時の為替相場)}=¥90,000
3. 商品を¥330,000(税込価格)で顧客に販売し、このうち消費税込みで¥66,000を現金で受け取り、残額をクレジット払いの条件とした。信販会社へのクレジット手数料¥12,000も販売時に計上した。なお、消費税の税率は10%とし、税抜方式で処理するが、クレジット手数料には消費税は課税されない。
ア.売上 |
イ.支払手数料 |
ウ.クレジット売掛金 |
エ.売掛金 |
オ.現金 |
カ.仮受消費税 |
解 答
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仕 訳 |
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借 方 科 目 |
金 額 |
貸 方 科 目 |
金 額 |
|
61 |
オ |
66,000 |
ア |
300,000 |
ウ |
252,000 |
カ |
30,000 |
|
イ |
12,000 |
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解 説
クレジット販売を行った場合には、信販会社に対する手数料を控除した金額が入金されることとなる。(第150回一部改題)
(借) |
現金 |
66,000 |
(貸) |
売上 |
300,000 |
(〃) |
クレジット売掛金 |
252,000 |
(〃) |
仮受消費税 |
30,000 |
(〃) |
支払手数料 |
12,000 |
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※ 仮受消費税:¥330,000(販売代金)×10%(消費税)/110%=¥30,000
クレジット売掛金:¥330,000(販売代金)-¥66,000(現金回収額)
-¥12,000(クレジット手数料)=¥252,000
4. 決算にあたり、売上債権の期末残高¥1,000,000について2%の貸倒れを見積もり、貸倒引当金を設定したが、その全額について税法上の損金算入が認められなかったので、貸倒引当金にかかわる税効果会計の仕訳を行う。貸倒引当金に期首残高はなく、また法人税等の法定実効税率は30%である。なお、貸倒引当金を設定するための仕訳はすでに行っているものとし、税効果会計の適用に関する仕訳のみを解答すること。
ア.繰延税金資産 |
イ.法人税、住民税及び事業税 |
ウ.仮払法人税等 |
エ.繰延税金負債 |
オ.法人税等調整額 |
カ.未払法人税等 |
解 答
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仕 訳 |
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借 方 科 目 |
金 額 |
貸 方 科 目 |
金 額 |
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62 |
ア |
6,000 |
オ |
6,000 |
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解 説
税効果会計(第156回一部改題)
⑴ 貸倒引当金の設定
(借) |
貸倒引当金繰入 |
20,000 |
(貸) |
貸倒引当金 |
20,000 |
※ ¥1,000,000(期末債権)×2%=¥20,000
⑵ 損金不算入による税効果(解答)
会計上は「貸倒引当金繰入(費用)」として処理されているが、法人税法上損金として認められないため、会計上の資産と法人税法上の資産にズレが生じる。そのズレの金額に対して税効果会計を適用する。
(借) |
繰延税金資産 |
6,000 |
(貸) |
法人税等調整額 |
6,000 |
※ ¥20,000(損金不算入額)×30%(法定実効税率)=¥6,000
5. 外部に開発を依頼していた社内利用目的のソフトウェア(開発費用¥40,380,000は銀行振込により当座預金より全額支払済み)が完成し使用を開始したため、ソフトウェア勘定に振り替えた。なお、この開発費用¥40,380,000の内容を精査したところ、ソフトウェアの作り直し対象となった部分の費用¥4,380,000が含められており、資産性がないものとして除却処理することとした。
ア.ソフトウェア仮勘定 |
イ.固定資産除却損 |
ウ.未払金 |
エ.買掛金 |
オ.当座預金 |
カ.ソフトウェア |
解 答
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仕 訳 |
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借 方 科 目 |
金 額 |
貸 方 科 目 |
金 額 |
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63 |
カ |
36,000,000 |
ア |
40,380,000 |
イ |
4,380,000 |
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解 説
ソフトウェア完成までの費用は全額が支払済みであるため、「ソフトウェア仮勘定(資産)」で処理されており、完成にともなってこれを「ソフトウェア(資産)」に振り替える。ただし、開発費用の中に資産性のない金額が含まれているため、問題文の指示通り「固定資産除却損(費用)」で処理する。(第154回一部改題)
(借) |
ソフトウェア |
36,000,000 |
(貸) |
ソフトウェア仮勘定 |
40,380,000 |
(〃) |
固定資産除却損 |
4,380,000 |
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6. P社はX1年3月31日にS社の発行済株式総数の70%の株式を15,000千円で取得して支配を獲得し、S社を連結子会社とした。よって、下記の[資料]よりX1年3月31日に必要な連結修正仕訳を示しなさい。
[資料]
X1年3月31日におけるS社の純資産項目は、資本金16,000千円、資本剰余金3,000千円および利益剰余金1,000千円であった。
解 答 (単位:千円)
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仕 訳 |
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借 方 科 目 |
金 額 |
貸 方 科 目 |
金 額 |
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64 |
資本金 |
16,000 |
S社株式 |
15,000 |
資本剰余金 |
3,000 |
非支配株主持分 |
6,000 |
|
利益剰余金 |
1,000 |
|
|
|
のれん |
1,000 |
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解 説
(借) |
資本金 |
16,000 |
(貸) |
S社株式 |
15,000 |
(〃) |
資本剰余金 |
3,000 |
(〃) |
非支配株主持分 |
6,000 |
(〃) |
利益剰余金 |
1,000 |
|
|
|
(〃) |
のれん |
1,000 |
|
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※1 のれん:15,000千円(S社株式)-20,000千円(Ⓢ資本合計)×70%(Ⓟ持分割合)=1,000千円
2 非支配株主持分:20,000千円(Ⓢ資本合計)×30%(非株の持分割合)=6,000千円
7. P社はX1年3月31日にS社の発行済株式総数の70%の株式を15,000千円で取得して支配を獲得し、S社を連結子会社とした。よって、下記の[資料]よりX2年3月31日に必要な連結修正仕訳を示しなさい。
[資料]
P社はS社に対して商品を販売しており、P社の売上高にはS社に対するものが3,680千円含まれている。なお、S社の期首商品にはP社からの仕入分が780千円、期末商品には650千円が含まれている。P社がS社に対して30%の利益率で商品を販売している。
解 答 (単位:千円)
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仕 訳 |
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借 方 科 目 |
金 額 |
貸 方 科 目 |
金 額 |
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65 |
売上高 |
3,680 |
売上原価 |
3,680 |
利益剰余金当期首残高 |
234 |
売上原価 |
234 |
|
売上原価 |
195 |
商品 |
195 |
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解 説
■ 売上高と売上原価の相殺消去
(借) |
売上高 |
3,680 |
(貸) |
売上原価 |
3,680 |
■ 未実現利益の消去・戻入
(借) |
利益剰余金当期首残高 |
234 |
(貸) |
売上原価 |
234 |
(借) |
売上原価 |
195 |
(貸) |
商品 |
195 |
※1 期首商品:780千円(Ⓢ期首商品棚卸高のうちⓅより仕入分)×30%(利益率)=234千円
2 期末商品:650千円(Ⓢ期末商品棚卸高のうちⓅより仕入分)×30%(利益率)=195千円
8. P社はX1年3月31日にS社の発行済株式総数の70%の株式を15,000千円で取得して支配を獲得し、S社を連結子会社とした。よって、下記の[資料]よりX2年3月31日に必要な連結修正仕訳を示しなさい。
[資料]
P社はX1年7月1日にS社に対して8,000千円の貸付け(利率年2%、利払日は毎年6月末日、期間5年)を行っている。利息の計算は月割により行っており、P社・S社とも利息収益または費用は「営業外収益」または「営業外費用」として計上している。
解 答
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仕 訳 |
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借 方 科 目 |
金 額 |
貸 方 科 目 |
金 額 |
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66 |
長期借入金 |
8,000 |
長期貸付金 |
8,000 |
営業外収益 |
120 |
営業外費用 |
120 |
|
未払費用 |
120 |
未収収益 |
120 |
|
|
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解 説
■ 貸付金と借入金の相殺消去
(借) |
長期借入金 |
8,000 |
(貸) |
長期貸付金 |
8,000 |
■ 受取利息と支払利息の相殺消去
当期より金銭の貸借が行われているため、当期9か月分の利息を取り消す必要がある。
(借) |
営業外収益 |
120 |
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(貸) |
営業外費用 |
120 |
※ 8,000千円×2%×9か月(X1年7月1日~X2年3月31日)/12か月=120千円
■ 未収収益と未払費用の相殺消去
(借) |
未払費用 |
120 |
(貸) |
未収収益 |
120 |
※ 8,000千円×2%×9か月(X1年7月1日~X2年3月31日)/12か月=120千円