近年、試験問題が公開されてこなかった日商簿記2級ですが、2024年4月末に日本商工会議所のホームページにサンプル問題が公開されました。
また出題傾向や対策についても、長く簿記講座の講師を務める鯖江悠平さんにお話をお伺いしましたので、参考にしていただければ幸いです。
目次
日商簿記2級試験の最近の過去問はある?
日商簿記2級の受験を考えている方は、できれば無料で過去問を探したいと思っている方も多いかと思います。
また2020年12月から施行されたCBT方式(決められた会場のパソコンで試験に解答していく方式)の場合、受験者によって問題が異なるため、出題された問題が公開されることはありません。
しかし2024年度4月末、日本商工会議所のホームページにサンプル問題として3つの試験問題が公表されました。
https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/sample
そこでこれらのサンプル問題の傾向と対策について、講師視点で分析・解説いたします。ぜひ参考にしていただければ幸いです。
日商簿記2級の試験について
日商簿記2級試験の合格基準ですが、100点満点のうち70点以上取れることが条件です。
商業簿記の問題が60点、工業簿記の問題が40点の配点となっており、制限時間90分で解答します。
さらに細かい試験の配点ですが、
大問4⑴12点 ⑵16点、大問5が12点(工業簿記)
先ほども述べたとおり、試験にCBT方式が採用されたことにより、いつでも、何度でも試験に挑戦できるようになりました。これにより、受験者数は増加しています。一方で気軽な受験者も増えたためか、合格率は減少傾向にあります。
公開されたサンプル問題の傾向
第1問
仕訳の問題が5問出題されます。公表されている過去問と同様の問題が頻出しているため、できるだけ正解したいです。しかし、サンプル2では、難易度が高い問題も見受けられた印象です。
第2問
サンプル1 株主資本等変動計算書
公表されている過去問で対策は十分でした。
サンプル2 税効果会計
新たな論点であり、税効果会計について十分な理解がなければ完答が難しいと思います。
サンプル3 連結会計
過去の問題と出題論点はおおよそ同じです。
第3問
決算に関するオーソドックスな問題ですが、外貨建取引等の新しく入った論点も取り入れられています。これらの論点の学習は、必須です。
第4問
⑴仕訳について
様々な論点からの出題であり、公表されている過去問では仕訳が問われることが少なかったため、対応が難しいかもしれません。
⑵ 標準原価計算・組別総合原価計算・個別原価計算が出題されており、過去問に類似する出題です。
第5問
CVP分析・直接原価計算・標準原価計算が出題されており、こちらも第4問⑵と同様に過去問に類似する出題です。
総じて、工業簿記の第4問⑵、第5問については比較的出題傾向が安定しており、公表されている過去問を解くことで対応できると思います。
また、第2問は様々な論点から出題されているため、最も出題傾向が読みづらい、かつ、難易度のバラツキが多い印象でした。
公開されたサンプルの難易度と対策
⑴ サンプル1 難易度★★★☆☆
過去に公開されているものと同様の出題が多かったため、
過去問できちんと対策していれば、「似たような問題があったな」と気づいて得点につなげることができるのではないでしょうか。
⑵ サンプル2 難易度★★★★★
第2問では、
具体的には退職給付費用・貸倒引当金繰入・貸倒引当金・減価償却累計額・投資有価証券・その他有価証券評価差額金は、税効果会計の深い知識がなくても解ける箇所でした。
また第5問に出題されている固定費調整は、苦手意識のある人が多い分野ではありますが、こういったところを克服しておくことも重要です。
⑶ サンプル3 難易度★★★★☆
第2問で連結会計が出題されています。連結会計は
過去には非常に難しい問題も出題されましたが、本問は基本的な内容が問われています。とはいえ、連結会計に対する苦手意識を持つ人が多いと思います。
日商簿記2級に合格するためには避けては通れない論点となりますので、諦めずに学習しましょう。
まとめ
サンプル問題についての概要がお分かりいただけたでしょうか。最近は、過去問が公表されていないため具体的にどのような問題が出題されているか分からなかったかと思います。
しかし、今回サンプル問題が公表されたことにより出題形式など把握することができたのではないかと思います。
基本的にはCBT方式以前の出題傾向と変わりませんが、出題方法などは常に変化しています。基礎学習を重点的に行い、基礎論点+部分点を取り、合格を目指してください。